「共通マニュアルのポイント」


 フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000031  担当講師:蒔苗昌彦 


●セクション1「当コース開講の趣旨」

当コースは、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」を補足するためのコースである。

コース000030では、職務ごとのマニュアル「職務分掌マニュアル」に的を絞って、そのあり方・作り方・使い方について詳細に説明したように、職務分掌マニュアルは、個々の職務に就く人を主体としその仕事の内容を記述する。

これに対し、当コースでいうところの共通マニュアルとは、

A.全社員・全職員
   もしくは
B.特定の事業部や部署の社員・職員全員
   もしくは
C.特定の職位、
   もしくは
D.特定の職群・職種等
  が、職務の違いに関係なく行わなければならない仕事を、
  一冊のマニュアルにまとめたもの。

   もしくは

E.誰が使おうと同じ手順や注意点を守るべき機器・道具・施設・設備・コンピュータ等の取り扱いマニュアルである。

以下これらを共通マニュアルのタイプA、タイプB、タイプC、タイプD、タイプEと呼ぶ。

当コースでは、コース000030の内容を前提に、こうした共通マニュアルのあり方について述べる。

職務分掌マニュアルと共通マニュアルは、組織全体から観ると、仕事の情報媒体として、互いに補完する関係とする。ここでいう補完する関係とは、情報が片方になくとも、もう片方にある、という関係である。そして、情報の重複がない関係である。

なお、以下を読み進める前に、必ず、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」の受講を済ませて下さい。

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《目次》
セクション1「当コース開講の趣旨
セクション2「
共通マニュアルのたとえ 
セクション3「
共通マニュアルの特性
  3-1
「共通マニュアルの特性」
  3-2
「特性から沸く疑問と答え」
セクション4「その他補足
  4-1
「規定(規程)との関係」
  4-2
「基本構成と書式・仕様」」
セクション5「まとめ 共通マニュアルのポイント
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●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000031「共通マニュアルのあり方」 担当講師:蒔苗昌彦 eラーニング 通信教育  


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セクション2「共通マニュアルのたとえ」

共通マニュアルには、たとえば、次のようなマニュアルが該当する。

1.苦情応対マニュアル

お客様や消費者からの苦情を受けた時、社員・職員が統一的な応対すべき点について、手順を示すもの。タイプAにあたる。

なお、同じ苦情応対マニュアルであっても、苦情応対専門の職務のために作成されたマニュアルは、職務分掌マニュアルに該当し、共通マニュアルには該当しない。

2.集客施設火災対応マニュアル

集客施設運営が専業の会社ならば、全社員・全職員の共通マニュアルとして。集客施設運営が専業の事業部や部署ならば、その事業部や部署の社員・職員全員の共通マニュアルとして。いざ火事が発生した際に、どのようにしてお客様に害が及ばないよう対応するか、その手順を記載したもの。
(※火災対応については手順書の事例をコース000032に紹介してあります。)

前者は共通マニュアルのタイプA、後者は共通マニュアルのタイプBにあたる。

3.人事制度運用マニュアル・管理職用

部下を持つ管理職が、部下の役割設定・目標設定・日常指導・人事考課、そして人事部への報告をどのようにするのか記したマニュアル。「評価者マニュアル」「人事考課マニュアル」とも呼ばれる場合があるが、役割設定・目標設定・日常指導の義務を果たしてこそ人事考課権が発生するとの考えからすると、こうした名称は適切ではないので、「人事制度運用マニュアル・管理職用」と呼ぶ。共通マニュアルのタイプCにあたる。

なお、同じ人事制度運用マニュアルであっても、人事部門の人事制度担当職務のために作成されたマニュアルは、職務分掌マニュアルに該当し、共通マニュアルには該当しない。

4.調理者用衛生管理マニュアル

大規模なホテルやホテルチェーン等で自社直営のレストラン・宴会場が多数ある場合や、大規模な調理食製造業で工場も複数あるような場合等において、調理に従事する者が調理物の種類に関係なく共通して守るべき衛生について記したもの。タイプDに該当する。

5.旅客航空機操縦マニュアル

旅客航空機の種別に、それを操縦する機長や副操縦士のために貸与されるマニュアル。タイプEにあたる。もちろん、新機種の開発段階では、テストパイロット用としても貸与されるであろう。

なお、旅客航空機の機長の作業は、航空機を操縦することだけではない。それ以外にも、作業はある。そうした諸々の作業は、職務分掌マニュアルにすべて記載されていることが前提となる。

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●セクション3「共通マニュアルの特性」

3-1「共通マニュアルの特性」

前セクションの例も前提として、共通マニュアルは次の特性を持つ。

特性1.共通マニュアルはタイプに関係なく、個々の職務分掌マニュアルとは別の独立したマニュアルとなる。つまり、共通マニュアルを渡された者にしてみれば、職務分掌マニュアルと、配られた共通マニュアルの両方を参照し、仕事を行なうことになる。

特性2.共通マニュアルの作成・配布・改訂・回収等の管理は、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ。

特性3.タイプD(特定の職群・職種用)は、一般に流通している情報をそのままマニュアルとみなすことができる可能性が大きい。

特性4.タイプEは、機器・道具・施設・設備・コンピュータ等のメーカーから供給される情報を基に作成するか、メーカーが丸々作成したものをそのまま利用する。

3-2「特性から沸く疑問と答え」

さて、前項の特性から、いくつかの疑問が沸いて自然である。次にそれら疑問と答えを記す。

疑問1.「職務分掌マニュアルと共通マニュアルの2冊(もしくは3冊以上)が、別々の冊子となっていると煩わしいので、1冊にまとめてしまうことはできないか?」

どの冊子も薄い場合に限っては、一つのバインダーに綴じるという形でまとめるのは構わないと思う。

しかし、編集して一つのマニュアルへと合併してしまうことは、たとえページ数が少なく厚さが薄い場合であっても、お勧めできない。なぜならば、管理責任を持つ者が異なるからである。

職務分掌マニュアルについては、その職務が所属する部署の長が責任を持つ。つまり、いわゆる「ライン」が責任を持つ。

共通マニュアルは、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ。

もしどうしても編集して一つのマニュアルに合併するならば、両者のさらに上位に管理責任部署を設けるか、両者が協議しながら編集することになろうが、これは現実的ではない。

冊子が厚い場合は、編集でまとめることどころかバインダーにまとめることすら、現実的ではない。

なお、社内ネットにてパソコン画面上で掲示する場合には、サイトマップとリンクを利用することで瞬時に別ページに飛べ、「複数の冊子をまとめる」という考えにこだわる必要性はなくなると思う。

疑問2.特性3「タイプD(特定の職群・職種等の共通マニュアル)は、一般に流通している情報をそのままマニュアルとみなすことができる可能性が大きい」という言うが、本当に一般に流通している情報がその仕事に役立つのか?

具体的に例をあげてみれば、この疑問が解けることを理解頂けると思う。たとえば、看護師は「特定の職種」に該当するが、この職種は勤務先にかかわらず共通する作業とその手順があり、その情報は看護師になる勉強をする段階で得る情報も含め、医療の世界で専門書として流通しているはずだ。

だから、勤務先にかかわらず共通する作業とその手順については、市販の専門書に依存できると思う。個々の病院特有の取り決め・役割分担・手順等についてのみ独自作成すれば済む。

なお、市販の専門書をそのまま渡すことをせず、転載をして独自編集し印刷配布することは、出版社と著者の許諾を得ない限り著作権侵害となる可能性が高く、お勧めできない。やはり、そのまま配布すべきである。

ちなみに、市販の専門書は、必ずしも「マニュアル」との名称が付いているわけではないが、作業手順等、仕事の方法が記載されているならば、書物の名称にかかわらず共通マニュアルとみなしてよい。

ただし、そこに記載されている通りに実行しなければならないのか(規定情報)、そこに記載されていることを参考に自分の判断で実行しなければならないのか(参考情報)、明確になっている必要があるので、図書の選定の際には、入念に点検すること。もし不明確な図書を選定する場合には、選定責任者が、どの記述が規定情報で、どの記述が参考なのかが分かるようにした一覧表等の別紙を作成し、図書に添付するようお勧めする。

疑問3.独自で作成する共通マニュアルは、そうたくさんはないのでは?

市販の専門書をマニュアルとみなして利用できることや、メーカーが丸々作成してくれるマニュアルを利用できることを前提とすれば、独自で作成する共通マニュアルは、そうたくさんあるわけではない、と私は思う。職務ごとに職務分掌マニュアルがありそれが充分に機能しているとの前提に立っての共通マニュアルなので、なおさらである。

疑問4.特性2で「共通マニュアルの作成・配布・改訂・回収等の管理は、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ」としたが、具体的にはどのような部署か?

セクション2で示した例を用いて説明すると、最も分かりやすいのが、例3「人事制度運用マニュアル・管理職用」である。どのような組織であろうとも、こうしたマニュアルを発行するのは人事部門であろう。規模が小さい組織ならば、総務部の人事課かもしれないが、いずれにしても人事の専門部署が責任を持つ。

例1「苦情応対マニュアル」は、お客様相談センターやCS推進室等の名称がついた部署が責任を持つ。規模が小さい組織の場合は、お客様相談係やCS推進係等の名称の可能性もあろうし、総務部が担当するかもしれない。いずれにしても、お客様からの苦情に対しどう応対するか、その基準を作る部署(もしくは職務)はあろうから、そこが責任を持つ。

例2「集客施設火災対応マニュアル」は、防災を統括する部署。例4「調理者用衛生管理マニュアル」は、衛生を総括する部署が、名称はともあれ、法律に呼応して必ず存在するはずだから、その部署(もしくは職務)が責任を持つ。

例5「旅客航空機操縦マニュアル」は、該当する航空機のメーカーが作成と改訂の責任を持つ。配布と回収の責任は、機長と副操縦士を雇用している会社の、機長と副操縦士が所属する部門が責任を持つ。

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セクション4「その他補足」

4-1「規定(規程)との関係」

規定(規程)と共通マニュアルの関係は、次の通り。

共通マニュアルは、組織全体の規定(規程)を制定(または改訂)していく中、規定(規程)にて取り決めたことを実現するために必要な作業手順等の方法を、全社員・全職員、または特定の事業部や部署、または特定の職群・職種等に対して伝える必要がある場合に、作成する。

つまり、順番としては先に組織全体の規定(規程)があり、後に共通マニュアルがある。

ただし、これは理想の流れであり、現実には、共通マニュアルを先に発行し、後に規定(規程)を整備することがあっても構わない。また、職務分掌マニュアルを整備していく中、複数の職務が同じ作業をすることが確認され、それを個々の職務分掌マニュアルにそれぞれ記載するのではなく、別冊へと抽出してマニュアル化したほうがよいと判断し、共通マニュアルを作成する結果となっても構わない。

が、いずれにしても、規定(規程)と共通マニュアルが、全く無関係に、別々に存在するような状態は避けなければならない。もしそのような状態にある場合は、組織全体の規定(規程)を主体とし、共通マニュアルがどのような位置づけにあるかを整理しよう。そして、整理した結果を。規定書(規程書)側に明記しておこう。

4-2「基本構成と書式・仕様」

共通マニュアルの基本構成と仕様は、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」にて説明する職務分掌マニュアルの形式に準じること。また、職務分掌マニュアルの主な構成要素である作業手順書の書式は、コース000032「作業手順書の作成・事例編」で示す書式の通り。

ただし、市販の図書を共通マニュアルとみなして配布する場合は除く。

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セクション5「まとめ 共通マニュアルのポイント」

以上、あくまでもコース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」を補足するコースとして共通マニュアルについて述べた。次に、まとめとして、共通マニュアルのあり方についてポイントを復習する。

ポイント1.共通マニュアルとは、職務の違いに関係なく行わなければならない仕事を、一冊のマニュアルにまとめたもの。
もしくは、誰が使おうと同じ手順や注意点を守るべき機器・道具・施設・設備・コンピュータ等の取り扱いマニュアルである。

ポイント2.職務分掌マニュアルと共通マニュアルは、組織全体から観ると、仕事の情報媒体として、互いに補完する関係とする。

ポイント3.補完する関係とは、情報が片方になくとも、もう片方にある、という関係、そして、情報の重複がない関係である。

ポイント4.共通マニュアルはタイプに関係なく、個々の職務分掌マニュアルとは別の独立したマニュアルとなる。

ポイント5.共通マニュアルの作成・配布・改訂・回収等の管理は、その共通マニュアルのテーマとなっている事柄について組織を横断して取り決める部署が責任を持つ。

ポイント6.共通マニュアルは、必ずしも組織内で作成すると限らず、一般に流通している情報をそのままマニュアルとみなすことが可能な場合や、メーカー等の外部組織が丸々作成したものをそのまま利用することが可能な場合もある。

ポイント7.職務分掌マニュアルと共通マニュアルの2つを編集して合体し一つのマニュアルへと合併してはならない。

ポイント9.共通マニュアルの基本構成と仕様は、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」に記載される職務分掌マニュアルに準じる。

ポイント10.職務分掌マニュアルの主な構成要素である作業手順書の書式は、コース000032「作業手順書の作成・事例編」で示す書式の通り。

ポイントは以上であるが、とにもかくにも、着手の順番はさておいても、コース000030で解説する「職務分掌マニュアル」の整備を行うこと。いくら共通マニュアルによって共通で行うことが分かっても、各人の役割分担と責任・権限が不明では組織運営・業務運営は円滑にいかないと思う。

それでは、また別のコースでお会いしましょう!

 <次セクションへ続く>

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2007年10月11日更新 ネット研修 担当講師:蒔苗昌彦  portrait


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