<育成のための注意叱責のポイント・文章解説>
1.発覚したら、すぐに、注意叱責すること。
なぜ、発覚したら、すぐに※1、注意叱責しなければならないのか?
それは、随分が時間が経過し、そういう出来事があったかどうか忘れた頃に注意叱責されても、本人(部下)はピンとこないからだ。また、あなたが(上司が)気がついたにもかかわらず、そのまま放置しておけば、本人(部下)は、そうした仕事のやり方で構わないものと思ってしまう。そして、同じ過ちを繰り返し、そのうちにそれが仕事のスタイルとして定着してしまう。だから、あなたが(上司が)気がついたら、すかさず注意叱責することが大切なのである。中には、気がついても見過ごしておいて、ある日突然、まさに「堪忍袋の緒が切れたように」一気にまとめて怒り出す上司がいるが、人材育成の観点からすれば失格である。※2
2.人間そのものを叱責しないこと。
なぜ、人間そのものを叱責してはならないのか?
人間の尊厳を傷つけることは、たとえ上司であっても許されていないことは、言うまでもない。
が、これはさておき、人材育成の観点から観た場合は、次のような理由による。
それは、人間そのものを叱責してしまうと、本人の仕事の意欲が根本から減退してしまい、注意叱責の対象となる事だけでなく、本人が得意とする事までもが、かすんでしまうからである。樹木に例えれば、人間そのものは、大地に張る根であり枝葉を抱える幹である。そして、人間が行う様々な行為は、幹から生える無数の枝葉である。もし、その根であり幹である部分を枯らしてしまえば、それに付いている枝葉を全て枯らしてしまう。それと同じように、人間そのものを叱責してしまえば、人間が行う悪い行為だけでなく、人間が行う良い行為までも奪ってしまう。叱責しなければならないのは、あくまでも、悪い行為だけである。悪い枝葉だけを折り取ればいいのであって、根や幹を枯らしてはならないのと同じである。
なお、人間そのものを叱責した形にならないためには、言葉の選び方や言い回しに細心の注意を払わなければならない。※3 いくら心の中では人間そのものを叱責していないつもりでも、言葉や言い回しが不適切であると、相手は傷ついてしまうであろう。
3.事実確認できた過ちだけを、注意叱責の対象とすること。
なぜならば、仮説や推理によるものは※4、そもそも「過ち」として取り扱うことができないからである。だから、注意叱責する際には、上司は、必ず、過ちがあった事実を確認しなければならない。
組織運営上、上司と部下は、双方向の信頼関係を築く義務がある。だから、上司が部下を、少しでも疑わしく思うことがあれば、それを心の中に押し止めて悶々とするのではなく、すぐに部下に問うて事実を確認し、疑いを晴らす必要がある。疑いながら信頼関係を作ることは不可能であることを、肝に銘じよう。
4.重点を決めて、注意叱責すること。
部下が一度に複数の過ちを犯すことは、十分ありうる。育成観点に立った場合は、それら複数の過ちの中で最も深刻な過ちに重点を置いて、注意叱責することが望ましい。なぜならば、注意叱責を受ける部下側としては、一つのことを注意叱責されるだけでも気まずいのに、あれもこれもと複数叱責されては、混乱してしまい、どのことから改めていったらいいのか分からなくなってしまう。だから、なるべく、重点を置くべきもの一点だけに絞り込んで注意叱責することが望ましい。どうしても、複数の項目について注意叱責する必要がある場合は、一つだけ重点を置き、残る項目は、当人が注意叱責されたと感じないように、さらりと軽やかに付け加える程度にしておこう。
5.注意叱責の理由を述べること。
人間は、自らが、理解し納得してこそ反省し、改善しようと決意する。だから、上司は、必ず注意叱責の理由を述べなければならない。育成観点に立った場合、これは、注意叱責をする側の絶対的義務と言っても過言ではない。もし、上司自身、理由が分からずに注意叱責したとすれば、そもそも注意叱責する必要性があったのかさえ疑われる。理由を提示しない叱責は、叱責される側には全く関係のない、上司側の不機嫌な気持ちを、たまたま出くわした部下にぶつけて憂さを晴らしている、と解釈されても仕方ないほどの行為なのである。
6.ダラダラ・クドクドと注意叱責しないこと。
重点を決めて注意叱責すれば、必然的に、ダラダラ・クドクドとならないはずである。裏返せば、ダラダラ・クドクドと注意叱責するということは、重点を決めていない証拠である。また、上司が自分自身のストレス解消の手段として、注意叱責を装っていると誤解されても仕方ないほどである。気をつけよう。
7.最後に励ましの言葉を掛け、笑顔で別れること。
部下を育成するために、仕事で活躍してもらうために、過ちを注意叱責をするのである。落ち込ませるために注意叱責をするのではない。だから、注意叱責をしたままで別れてしまうのではなく、最後に励ますことが必要である。また、注意叱責が終了した時点で、部下の過ちは過去の出来事としなければならない。上司がいつまでも引きずっているかのように感じさせてはならない。そのためには、笑顔を見せるのが一番である。笑顔を見せれば、それによってそれまでの気まずい雰囲気を、一瞬にして断ち切ってしまうことができる。また、笑顔は、「あなたという人間そのものを嫌いになったわけではないのですよ...」という明快なメッセージにもなり、注意叱責によって人間関係が途切れてしまうことがなくなる。とにかく、注意叱責したことによって、部下の意欲を減退させてしまうのでは、育成のための注意叱責として失格である。ますますやる気になってもらうために、最後に励ましの言葉を掛け、笑顔で別れることが大切なのである。
<ポイント解説は以上>
以上で、当コースは終了いたします。
いかがでしたか?
当コースでは、ご覧の通り、軽易な過ちを想定してケーススタディを行いました。
しかし、現実には、重大な過ちを注意叱責しなければならない場合や、緊急に注意叱責しなければならない場合等があるでしょう。そのような場合には、当コースのビデオで演じた役者さんよりも、遙かにきつい態度で叱る必要があると思います。が、態度がきつかろうと、ポイント7の「笑顔」が無くなる程度で、基本的ポイントは同様だと思います。
なお、第2弾を制作する機会が訪れた際には、重大な過ちを犯した場合の叱り方を、実務の作業現場別に制作したいと思います。
では、また別のコースにてお会いしましょう!
<おわり>
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