●セクション8
課長がマネージャーへ再び連絡を試みようとライド運営部のオフィスへ内線を掛けた時、私の携帯電話が鳴った。A子さんの父親からであった。彼女が目覚めたので、インタビューに来て欲しいとのことだった。
課長の運転で私は再び病院へ向かった。
屋外は耐え難い暑さだった。課長はカークーラーの出力を最大にした。
環境破壊による地球温暖化のせいだろうか。 今年の夏は、やたら乾燥していた。ソルマシティの湾岸地帯の夏は、例年、蒸し風呂のようになる。それに比べ、異常な乾燥である。洗濯物を外に干すには超便利だが、肌に気遣う女性たちは苦しんでいた。私の顔も普段のお化粧ではボロ布のようになってしまいそうなので、保湿系クリームの使用量をかなり増やしていた。
クーラーがようやく効き始めた社有車に課長を残し、私はまた病室へ向かった。
今度は、父親が個室前の廊下に出て待っていた。私の姿を見かけるなり歩み寄ってきた。そして、A子さんはたった今、再び寝入ってしまったと伝えてきた。インタビューはまたも不可能となった。父親は詫びた。
A子さんが置かれている状態が状態だし、そもそもインタビューは私のミッションである。いくらでも通うつもりだった。だから、詫びてもらうと、かえって申し訳なく感じ、私は逆に詫びた。が、それでも父親は、再び詫びた。私もさらに詫び返した。しばらくしてようやく落ち着き、A子さんが目覚めていた間のことを、父親は話してくれた。
彼女は泣き通した。泣きながら、「事故は自分の不注意だった」「今回のことでバトル遊園に迷惑を掛けた」と繰り返した。両親から事故の経緯を話すよう求められたわけでもないのに・・・。
この話を聞いた私は、父親が幾度も詫びてきた理由をさとった。
被災者本人の不注意。この解釈に、父親までもが、なびいてしまったのだ。そして、バトル遊園に対し説明を要求する正当性に関し、自信を喪失したのだ。
A子さん自身も言う。現場のマネージャーも言う。保全課員も言う。私の上司も信じ始めた。親ですら信じ始めた。
分かった。それはもう分かった。本人の不注意はあったのだ。そういうことにしよう。だが、なぜ不注意が起きたのか? 不注意以外にも原因はないのか?
事故を知った初日。「本人の不注意」という言葉を耳にすればするほど、私の追求心は煽られた。正直、両親の弱気に対してですら苛立った。


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