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職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」 担当講師:蒔苗昌彦


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 パート1「職務分掌マニュアルのあり方」


●セクション2「職務分掌マニュアルのあり方・結論」

職務分掌マニュアルあり方について、以下4点、私の結論を述べる。

2‐1「規定として位置づけること」

“人”は自分が就いた職務について、「どのような責任を負うのか/どのような権限を持つのか」「作業をする上で何か取り決めがないか/手順はどうなっているのか」といった切り口で関心を持つ※1。そのため、職務に就く“人”を軸として責任・権限・作業規定・手順を記述すると、関心と合致し、理解が早い。

当コースでは、「職務ごとに定められた役割分担と作業規定」を“職務分掌”と呼ぶ。

そして、職務ごとに定められた役割分担と作業規定を記載したマニュアルを、職務分掌マニュアルと呼び、それを規定として位置づけるべきと私は判断する。

ただし、全社員・全職員や全管理職等が同じ方法にて行う必要がある事を伝えるマニュアルは、話が別となる。これらは職務を特定しない「共通マニュアルとして位置づける。たとえば、集客施設における火災発生時の対応手順をまとめたマニュアル、人事制度の運営方法を管理職に伝えるためのマニュアル等が共通マニュアルとしてあり得る。

もっともこのようなマニュアルであっても、職務こそ一つに絞られないが、その立場に立つ人の責任・権限・手順を明らかにすることには変わりなく、そのため手順書の記述形式は、職務分掌マニュアルの中に掲載される手順書と全く同じとなる。

いずれにしても、共通マニュアルのあり方のポイントは、コース000031「共通マニュアルのあり方にて述べることとし、当コースでは職務分掌マニュアルに的を絞る。

なお、ここでいう“人”とは、「蒔苗昌彦」のような特定の人格を指すのではない。集団の単位である組織や部署に対し、個の単位として設定する不特定の人(1人単位の人)のことである。

ちなみに、かねてより一般に「人に仕事をつけるのではなく、仕事に人をつける」との考え方がある※4。前述の概念においても同様である。

2‐2「迅速に改訂できること」

職務分掌マニュアルは、改訂の必要性が発生した際、迅速に改訂できる形式・仕様とすべきである。
なぜならば、迅速に改訂できないと、たとえば次のような問題が発生するからだ。
・古い情報に従ったまま作業を行う者が出て、業務に支障が出る。
・そのマニュアルに対する信頼性が低下し、実際の職務を担当する者が別途、新たに独自のマニュアルを作成してしまう状況となり、その結果、二重の基準(ダブルスタンダード)が設けられてしまう※4。

2‐3「極力簡素なレイアウト・デザインとすること」

職務分掌マニュアルは、レイアウトやデザイン等を極力簡素にすべきである。つまり、凝ったレイアウトやデザイン等は避けるべきである。
なぜならば、凝ったレイアウトやデザインの文書は、簡素なレイアウトやデザインの文書に比べて、改訂作業により多くの時間を要するから。

多くの人がワープロを使いこなす時代、「ちょっとした手間で済むのだし、レイアウト・デザインに時間を割こう」という意見※5をよく聴くが、迅速な改訂が必要な職務分掌マニュアルにおいては、受け入れられない意見である。この「ちょっとした手間」が、いずれ、改訂の足手まといとなる。

2‐4「職務分掌マニュアルを統括管理する職務を設けること」

以上を実現するために、職務分掌マニュアルを管理する職務を継続的に設け、統括すべきである。
なぜならば、そうしないと各部署がバラバラに作成することになりかねず、形式・仕様の統一を図ることができないからだ。
しかし、これは肝心な理由というわけではない。肝心な理由は、職務分掌マニュアルは組織運営の上で重要な情報伝達手段であるため、そもそもすべて把握すべきであり、もし把握していないようであれば、それは根本的に誤っているから、である。

では、本当に、職務分掌マニュアルは重要な情報伝達手段なのか?
そう思っているからこそ当コースの講師を担当しているので、私としてはこれ以上の理由を説明できないが、世間一般においてどうかと言えば、たとえば企業不祥事の際に社長が記者会見を行う様子をテレビで見かけると、必ずと言ってもいいほど、再発防止策としてマニュアルの整備・徹底を発表する。また、不祥事の原因・責任が追求される局面においても、マニュアルの有無、内容の適正さ等が報道の表舞台に躍り出る。警察も当然、最も重要な証拠としてマニュアルを押さえるだろう。慌てて破棄したら証拠隠滅となり罪は一層重くなるだろう。

また、「職務分掌」は以前から存在し認め続けられてきた概念である上、近年はコーポレートガバナンス、企業統治の上で重視されている概念であり、経営セミナー等に参加してもよく耳にする。

こうしたことからも、「職務分掌」と「マニュアル」の両方の要素を併せ持つ「職務分掌マニュアル」は重要な情報伝達手段と判断してよかろう。

  <次セクションへ続く>

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関連コース 000031「共通マニュアルのあり方」

関連コース 000032「作業手順書の作成・事例編」

関連コース000070 「人事制度の構築と運営・運用の方法」


●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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※1:
皆が皆、このような関心を持つわけではない。仕事の意欲がない時・モチベーションが低い時、責任・権限・手順への関心は低くなる。
※2:
理屈の上では「職務分掌マニュアルを非公式に発行する」という行為も成り立つ。だが、隠し事があって表に出せない職務分掌マニュアル等は除き、たいていの職務分掌マニュアルは公式に発行されると思う。いかがだろう?
※3:
人に仕事をつけるしかない・つけたほうがよい業種・職種、状況もある。それを否定しているわけではないので、誤解なきよう。ただし、その場合、当コースでいう職務分掌マニュアルは不要である可能性が大きい。職務分掌マニュアルが不要な職務に関しては、パート3のセクション3を参照のこと。
 
※4:
或る人と別の人で基準や物事の解釈が異なってしまうわけだから、ダブルスタンダードがあると組織・業務が混乱する。その結果、大惨事を招くこともある。が、他種の規定類や職務分掌マニュアルであっても、改訂されるべき時には改訂されるべきだから、この話は職務分掌マニュアルに限られたことではないわけである。
※5:
業務用・自家用であってもレイアウト・デザインに凝ろうとする動機は、「そうしないと読んでもらえないのでは?・・・」という作り手側の懸念から起きると思う。この気持ちは分からなくはない。
しかし、すみやかに仕事の方法を習得して実践しようと思っている業務最前線の人にとってみれば、簡素のほうがかえって読みやすい。ましてや、改訂の足手まといとなるのだから、凝ったレイアウトやデザイン等はやはり避けるべきである。