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職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」 担当講師:蒔苗昌彦


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 パート2「職務分掌マニュアルの作り方」


●セクション13「改訂管理」

13‐1「基本的考え方」

職務分掌マニュアル「(改訂すべき箇所があったら)迅速に改訂を行うこと」が重要であると、繰り返し述べた。そして、「改訂すべき箇所があるにも関わらず改訂できないのであれば、職務分掌マニュアルなど作成しないほうがまし」とまで強調した。なぜならば、職務分掌マニュアルに記載されていることと、実際の職務の内容にズレが発生し、混乱をもたらすからだ。

ともかく、改訂すべき箇所があったら改訂を行う体制を、必ず整えよう。

職務分掌マニュアルに限らない話だが、改訂されるべき文書(または情報)が改訂されていないケースにおいて、その理由はたいてい「面倒くさいから」というもの。
ところが、不思議なことに、そういう理由を述べる人であっても、改訂されるべき文書が改訂されるという考え方には反対しない。「分かってはいるけれど、実行できない」という状態であり、その理由が「面倒くさいから」というわけなのだ。

当コースの職務分掌マニュアル作成法は、改訂ページの差し替えが容易となるよう、様々な配慮をしている。面倒くさい度合いは低めである。
しかし、「文書改訂は面倒くさい」という意識を持つ社員が多い会社においては、この配慮だけでは不足であろう。そこで、ただ「改訂をしましょう!」と声を掛けるだけではなく、会社として正式な改訂体制を作る必要がある。その方法を以下に述べる。

13‐2「職務分掌マニュアルの正式規定化と総務部による全社管理」

職務分掌マニュアルの存在、および、その改訂を行うことを、会社の正式な規定とし、全社員の義務とすることが体制作りの一歩である。会社の正式な規定とするということは、自動的に総務部(またはそれに類似する部署)の管理下に置かれることになる。総務部の管理下に置かれるということは、総務部以外の部署の職務に関する職務分掌マニュアルであっても、総務部の管理下に置かれるということである。

これは、総務部が各職務に対して直接、実務の指揮を行なうという意味ではない。各職務に対する指揮権は、あくまで、各職務が所属する部署の長にある。

総務部は、
1)「どこの部署に何の職務分掌マニュアルが存在するか」を会社全体的に把握するための目録管理
2)「各部署の職務分掌マニュアルが会社の定めた統一書式に則って作成されているか」の書式管理
3)「各部署が改訂を怠っていないか」の改訂管理
を行なう。
決して、各部署の長を飛び越し、各職務に対し直接指揮するという意味ではない。誤解なきよう。

以上の結果、各部署、および、総務部の双方に、最新の職務分掌マニュアル(およびその版下情報)が保管されることになる。
職務の特性次第では、その職務に就く者全員にも配布し、各人に保管させる。

13‐3「改訂を申請する義務」

改訂すべき箇所に真っ先に気づくことができるはずの立場は、その職務分掌マニュアルが対象とした職務に就く者である。だから、その者を最も重要な改訂申請者と位置づけ、改訂申請の義務について頻繁に強調すること。

実際に改訂するか否かについての決裁権は、「その職務を直接的に管理監督する職務」に付与される。それゆえ、職務分掌マニュアル改訂の必要性に気づいた者は、管理監督者に対して、改訂申請を行う。※1

もちろん、改訂すべき箇所がないと当人が判断しているのであれば、改訂申請の義務は発生しない。しかし、「これは変だな・おかしいな」「もっとよい方法があるな」と当人が思った以上は、必ず改訂申請することを義務とする。

改訂申請の義務は、規定上の義務とし、怠った場合には懲戒の対象とする。つまり、「変だな・おかしいな」「もっとよい方法があるな」と思っていながらも、改訂申請しなかったことが発覚した場合、それは懲戒の対象となる。懲戒の種類・程度は、改訂申請をしなかったために招いた結果の重大性に応じて決める。※2

なお、改訂申請者の義務は、改訂案を添付した申請を実行した時点で、達成される。申請後の改訂の可否判断に関する義務と、申請内容が否決されたことによって発生した問題については、責任を負わない。
ただし、否決された後、再び改訂の必要性を感じた場合には、また改訂申請をする義務が発生する。したがって、場合によっては、改訂申請を何度も繰り返す事態もありうる。

13‐4「改訂の可否を決裁する義務」

改訂申請を受けた管理監督者は、その責任において決裁をする。申請を受けた管理監督者が、どうしても自分で判断できない場合は、自分にとっての管理監督者(より上位の管理職)へ指示を仰ぐ。※3このあたりの決裁の流れは、職務分掌マニュアル改訂特有の流れというわけではなく、一般的な決裁の流れと同じに考えればよい。

管理監督者による決裁結果は、より上位の管理職を経由して、総務部の職務分掌マニュアル管理職務へ報告する。

13‐5「改訂報告を受けた総務部の義務」

改訂報告を受けた総務部の職務分掌マニュアル管理職務は、改訂内容が書式に従っているか否か等を点検する。
従っている場合は、受理した旨を返信した上、総務部保管分の版下情報を更新する。
書式に従っていない場合は、修正指示を出す。

なお、改訂の結果古くなってしまった版下情報であっても、職務分掌マニュアル管理職務はそれも保管しておくこと。そして、改訂のヒストリーが辿れるようにしておくこと。

13‐6「改訂申請書」

以上の一連の流れを実現するためには、申請書がいる。専用の申請書を作ってもよいし、既存の汎用申請書を利用してもよい。もちろんのこと、電子ファイルを利用しても構わない。

ちなみに、職務分掌マニュアルがある職務に就く者とその管理監督者は、いわゆる上司と部下の関係にあり、両者の緊密なコミュニケーションを前提とすれば、改訂申請書は不要、との意見をしばしば耳にする。さらに、この両者の関係に、正式な文書の使用を適用すると、人間関係がギクシャクするとの意見も耳にする。こうした意見は一面正しい。人間関係がギクシャクした結果発生しうる問題より、職務分掌マニュアル改訂が滞った結果発生しうる問題のほうが遙かに小さいと予想される業種ならば、こうした意見に合わせてもよかろう。
しかし、逆ならば、やはり両者の関係に対しても正式な改訂申請書の使用を義務づけるべきである。

13‐7「定期点検」

前項まで述べた改訂の方法論は、改訂箇所に気づいた場合の、いわば「随時改訂」に関してである。
しかし、随時改訂だけでは、改訂の重要性に対する意識が徐々に薄れてしまうことがありうるので、定期点検も併せて実施することをお勧めする。

定期点検は、年1回等、一定の時期に、総務部長(あるいはそれに相当する職務)が、各部長(あるいは事業部長等)に対して発令する。

発令は、部内(あるいは事業部内)にある職務分掌マニュアルを改訂する必要性が有るか無いか、管理監督者に確認させるよう、文書で発信することを以て行なう。そして、確認の結果を、各部長の責任において総務部長へ文書にて返信することを義務づける。これにより、改訂の必要性が無い場合でも、「改訂必要性無し」という報告を、部長間で正式に行うことになる。

本当に改訂の必要性がない状態が続いているならば、日頃から改訂の報告が総務部へあがってこないことになる。だが、総務部としては、それを完全に信じることはせず、「本当に改訂の必要性はないのですね?」という念押しを、年に1回はしておく。これにより、日頃から改訂の報告が総務部へあがってないことが、改訂申請をサボタージュしているわけではないことを、各部長に正式に証明してもらおうという意図なのである。

なお、定期点検の発令をきっかけに、現場から改訂申請があがってきた場合には、随時改訂と同じ流れで対応する。

13‐8「改訂の結果古くなってしまったページの処理」

改訂すれば当然、古くなってしまったページが発生する。冊子丸ごと差し替えの場合は、冊子丸ごと古くなる。そうした古いページ(紙)や冊子は、迅速に廃棄すること。

ただし、総務部の職務分掌マニュアル管理職務は、版下は古い情報のものであってもヒストリーが辿れるように、必ず保存しておくこと。版下の管理と印刷をして配布した紙の管理は、分けて考える。

<次セクションへ続く>

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●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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※1:
当人が気づかなくても、管理監督者が気づく場合がある。その場合は、管理監督者自らが、改訂申請者となる。
※2:
懲戒制度が機能しなければ、規定は骨抜きとなり形骸化してしまう、と私は判断する。
現実の職場においては、人間関係がぎくしゃくすること避けるため、規定があっても適用しない場合も多々あろう。が、規定がある以上は、心を鬼にしてでも規定違反は懲戒の対象とすべきである。
ただし、懲戒の度合いは、必要以上に厳しくならないようにすること。
※3:
改訂して本当に構わないか否か判断をする際に、他の部署に問い合わせたり、許可を得たりする必要性がある場合もあろう。