能力開発・序論」〜人間の能力はどうしたら開発されるのか?


 NPO法人 フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000701_0  担当講師:蒔苗昌彦 


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人間の能力は、どうしたら開発されるのか?

天才や秀才はさておき、追い詰められてこそ開発される、と私は思う。※1

私自身が天才や秀才ではなく凡人で、しかもどちらかと言えば物臭さな性分から、そう思えてならないのかもしれない。

しかし、凡人かつ物臭さという狭い観点ではなく、人間を含めた生物の進化という広い観点から見た場合においても、生きるか死ぬかというほど追い詰められる事態の連続が各生命体の能力の開発につながっていることが分かる。

「生きるか死ぬか」という言葉はぶっそうなので、人間の場合に適用するのは控えるとしても、追い詰められてこそ能力開発されるということには変わりなかろう。※2

さて、「追い詰められてこそ」とはいえ、人間の追い詰められ方とは、様々である。

まず、他者から追い詰められる場合と、自分が自分を追い詰めてしまう場合がある。また、特定の人物によって追い詰められるのではなく、本人を取り囲む環境・社会的状況・偶然の出来事等々により追い詰められる場合もある。また、追い詰められる対象事項も、一度に多くの事項が追い詰められることはむしろ珍しく、何か一つ二つの事項に関し追い詰められる場合が多いはずで、しかもそれは毎回同一というわけではない。こうやって考えると、そもそも人の個性が天文学的な数となるだけに、具体的な追い詰められ方となれば無限にも近い。

能力開発学科は、財源ゼロでスタートしたNPO活動の一環として開講されるだけになおさら、コース制作の時間・経費が制約されるため、ありとあらゆるケースをカバーすることはできない。

しかし、範囲を思い切り絞り込んで設定すれば、それなりに可能である。

では、どのように範囲設定をするのか?

まず、企業なり公共機関なりの組織に雇われている人たちのための能力開発、という範囲設定とする。つまり社会人に限定する。それも、いわゆる正社員・正職員に限定する。

次に、いわゆる天才や秀才の能力開発は論外とする。さらに、私のようにどちらかと言えば怠け者と言えなくもない人にも役立つ可能性がある方法を考える。が、金が儲かるノウハウ本を売るのと同様に「この通りやれば必ず能力開発できる」といったような保障は決してしない。つまり結局は本人の努力がなければ能力開発は不可能という前提に立つ。

しかしながら、本人の努力だけあてにするのではなく、努力の誘発が可能な環境を提供することも前提とする。ただし、あまりにも厳しい環境によって本人が潰れてしまっては困るので、ほどほどにする・・・。

色々と言ったので混乱させてしまったかもしれない。が、相当絞り込みができたことには違いない。

では、上記の制約の範囲内で、具体的にどのような方法が考えつくだろうか?

私は、何よりも一番に、能力開発を人事制度と連携させ、組織ぐるみで取りかかる方法を考えつく。

詳しくは、コース000070「人事制度の構築・運営・運用の方法」にて右図を用いて詳しく述べるが、とりあえずだいたいの説明をすると、、、

組織側が組織メンバーに求めたい能力を細目的に定義して公開し、メンバー各人はそれを基準にして能力開発の努力を行う。各人の上司は日常指導によりその努力を手助けする。組織は集合研修・通信教育・図書紹介等により、手助けする。期末には、自己チェックと能力考課という形で本人が上司が共同で振り返りを行い、能力開発の進捗度合いを点検する。その点検情報は組織側に集約され、組織全体で見た場合の能力の弱点を、集合研修や通信教育で補強したり、業歴者の採用等で補強する。

では、この方法の中軸となる「能力の細目的な定義」とは具体的にどのようなものかと言えば、その名称は「基礎能力開発基準(一覧)」であり、当能力開発学科のコース000701に事例と設定の方法を示す。

コース000070を受講済みであることが前提の問いかけとなるが、いかがだろう? これは人間(実際には社員・職員)をほどほどに追い詰める方式の能力開発の方法、と私は思う次第である。

実は、制約条件を緩やかにしていいのならば、ずっと効果的な能力開発の方法を示すことができる。

それは、後ろ盾もなく僅かな資金で自営業を開始し生き残りに努力するという方法だ。これは私自身が実証した方法なので、それこそ前述の制約の中では否定せざるをえなかった「金が儲かるノウハウ本」よろしく成果を保障してもいいほどだ。

ともかく、後ろ盾もなく資金も僅かとなれば、何でもかんでも自力でやらざるをえない。だから、会社員だった時には苦手だった飛び込み営業だろうと接待営業だろうと、コンピュータ操作だろうと経理だろうと資金繰りだろうと、行ったこともない外国での交渉事だろう・・・etc。ともかく、やらなければならなくなった事柄に関して、否応なしに能力開発されてしまった。

だが、この体験から実証された方法の適用は、いわゆる正社員・正職員という前述の制約からの逸脱となってしまう。残念ながら役に立たない。しかし、「追い詰められてこそ能力が開発される」という原則が正しいことの証明材料にはなるとは思う。

とはいえ、これは、凡人かつ物臭さという私個人の狭い範囲の体験談でしかなく説得力に欠くかもしれない。ついては、ここで私以外の人間の実証事例を紹介しよう。

それは、私が以前、東京ディズニーランドの開業前後に、オリエンタルランドの社員としてではあるものの、米国のウォルトディズニー社のマネージャーたちと深く関わった頃の事例だ。多少の脱線が伴う話となるが、お付き合い頂きたい。

さて、私自身は東京ディズニーランドの開業前年に中途入社でとしてオリエンタルランドに「いわゆる正社員として」採用されプロパー社員ではないが、株式会社オリエンタルランドは、朝日新聞社が発刊している「ディズニーランドの経済学」という文庫本によっても知られている通り、土地開発会社として千葉県の委託により浦安の遠浅の土地を埋め立てを行う会社であって、私よりも世代が上のオリエンタルランド社員の多くは土地開発事業に関わりそうした学歴と専門性や豊かな経験を持っていた。

実際、私の所属していた課で一時期課長をしていた人も大学では土木系を専攻し、浦安の埋め立て地で長年現場監督をしていた経験があり、お酒の席等で監督時代の楽しい思い出を何度も話してくれた。ともかく、山本周五郎の「青べか物語」の原風景になったとされる浦安の海辺は広大な遠浅で貝類も沢山獲れたそうで、午前に潮干狩りをしては現場事務所でアサリの味噌汁を毎日のように作って食べたという思い出話等、とてものどかで楽しい話を聞いた。

これも知れ渡っていることと思うが、ディズニーランドの誘致構想は埋め立てが相当進んでから浮上し、土地開発のエキスパート集団のオリエンタルランド社としては、米国ディズニー社との契約により、ショー、アトラクション、景観のデザイン、ゲストへのホスピタリティ、諸施設の運営、商品の開発販売、清掃、セキュリティ等々の多岐にわたるテーマパークノウハウを供給される立場であった。そのため、供給者側となる米国ディズニー社やその関連会社の人たちが、マネージャーを始めクリエイター、デザイナー、技術者等々大量に日本へ送り込まれた。ちなみに、この時期、日本の通訳・翻訳業界始まって以来の人手不足となりプロとしての経験が浅い人たちまで大量に駆り出されたほどである。

こうした状況下、テーマパーク事業のために中途入社した私は、雇用契約のうえでの上司はオリエンタルランド社の上司だったが、東京ディズニーランドを開業し運営するという実務上の課題においては、米国ディズニー社のマネージャーたちと頻繁に接触することとなり、具体的な指導もたくさん受けた。そして、その際、当然、彼らの仕事ぶりをたっぷりと知ることになった。

米国ディズニー社のマネージャーたちに関して具体的な思い出話をし出すと、実務上多くの接点があっただけに大量のページが必要となるためここでは控え、私が接触したマネージャーたちに共通する特徴の中でも最も印象の深い行動特性を述べると、それは「よく働く」ことでる。それも「一言も愚痴を言わずによく働く」ことである。しかも、二宮金次郎のように根っからの天性として勤勉だからよく働くというのではなく、「よく働かなければ解雇されてしまう」「解雇されたならばせっかくの高給を失ってしまう」「社内的地位を失ってしまう」という私的動機のため「よく働く」のである。もちろん、この裏を返せば、「よく働けば契約更新が続く」「給料もあがっていく」「社内的地位もあがっていく」という魅力があるから「よく働く」のであり、いわば飴と鞭が明確な環境に置かれているのである。

だから、マネージャーとそうではない人との根本的な立場の違いに関する認識も極めて高く、マネージャーではない人たちが、定時きっちりに出社し、定時きっかりに退社しても、そのこと自体には全く文句も愚痴も言わないどころか、出社時・退社時にばったり遭えば爽やかな笑顔で送り迎えをする。今なぜ、「送り迎え」という言い回しをしたかと言えば、マネージャーたちは一般労働者の時間枠では処理しきれない量の仕事を常に抱えているから、朝は早いし、夜も遅い。しかし、夜が遅いと言っても、飲み会で遅いということはなく、むしろ健康を気遣い仕事さえ処理すればさっさと帰宅して早く寝るように心がけているので、結果的には私の日本人上司よりもしっかり睡眠を取っており、そのため朝もかなり早く起きて出社時間も早い。もっとも、マネージャーたちは時給労働じゃないから所定出退勤時刻という時間感覚はなく、あるのは「充分に仕事をやれたか・否か」という感覚である。

とは言っても、繰り返しになるが、二宮金次郎のように子供の頃からの天性の聖人君子だからという理由ではなく、飴と鞭の環境に身を置いていることが彼らをそうさせている。そして、この鞭の側面が生む現実が、つまり「愚痴も言わずによく働かなければ解雇される」という現実が、「追い詰められてこそ能力が開発される」という実証事例である、と私は思う次第だ。

日本の管理職および管理職候補生であるべきところの「いわゆる正社員」を敢えて総じた上、米国ディズニー社のマネージャー諸氏と比較するならば、前者のほうが鞭的環境の側面が弱い。日本がいくらリストラが当たり前の時代に突入してから久しいとはいえ、臨時社員やパートタイマー等の時給労働者の雇い止めへの気づかいの度合いに比べたら、正社員の解雇にはずっと気を使う日本社会である。

米国では、時給労働者こそが真の労働者ということでその守ることこそが労働組合の役割ということでその力は日本より格段と強いため、解雇やレイオフ等において雇用者側はかなり気をつかわざると得ない。これに対し、マネージャーやマネージャー候補者群・秘書群はいわば一本釣り的な雇用契約である上、「いわゆる正社員・正職員」という曖昧な状態もないので、日本に比べればドライに解雇される。

マネージャーがドライに解雇される可能性が周知されている社会だから、犯罪を犯した等の理由でない限り、マネージャーを解雇されたという理由だけで生涯の烙印が押されてしまうほどまでにキャリアが傷づくことはない。「なにくそっ!」とばかり奮起して競合他社に自分を売り込み、転職先で大出世してしまったというケースもある。さらには、転職先での能力発揮を知った元の会社が、ヘッドハンティングで再度自社に引き戻し重要なポストに就けるというケースもある。

では、日米どちらのほうが良いか? 比較したことにより違いを明らかにすることはできても、優劣を付けることはできない。何しろ社会的背景が異なる。どっちもどっち。一長一短である。

しかしながら、当学科は、日本の団体・企業等の「いわゆる正社員・正職員」の能力開発のために、どうにかして、「追い詰められてこそ能力が開発される」という環境を提供する必要がある。一長一短という結論で終わらせるわけにはいかない。

そこで、すでに紹介済みのように、追い詰められた環境を、コース000701にて例を紹介する「基礎能力開発基準(一覧)」による働きかけと、上司による日常指導と、能力考課による定期点検によって演出することによって、本人の努力を促すのである。人事制度の上で昇級には反映されることになるので、それなりに追い詰められた環境と言えよう。

また、コース000070の「管理職・未管理職の区分と等級」の説明で強調する通り、「いわゆる正社員・正職員」は全員、管理職もしくは管理職候補もしくはこれらを目指す努力を義務とした雇用契約を結ぶ前提とするため、この面でも追い詰められた環境と言えよう。

いかがであろう?

米国のようにドライな解雇をするわけではないのでその意味では擬似的とも言え、「追い詰められた環境作り」というより「追い詰められた環境演出」と言ったほうがむしろ適切と言える方法だが、旧来の曖昧な環境に比べたら「ぬるま湯」ではないと思う。肯定的な言い回しをするなら、「ほど良い緊張とほど良い安心の双方を同時に提供する環境」である。

ともかく、追い詰められてこその、能力開発。だから、組織は組織メンバー各人を放置しておくのではなく、人事制度によって積極的に「追い詰められた環境」を提供すべきだ。そして、どうしても環境を提供してくれない組織に所属する人は、自分で自分を追い詰めるようにしよう。

<「能力開発・序論」おわり>

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※1
「必要性が発生してこそ」とも言えるが、必要性が発生するという状態は、一種の追い詰められた状態とも言える、と私は思う。
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※2
それでも、追い詰められずとも能力開発をしてしまう人が存在するのも事実だ。なぜ、そうした人たちが、追い詰められずとも能力の開発ができるのか? 要因は、私がそうでないだけに、見当がつかない。だから、やはり、天才や秀才、または神童といった言葉をあてがい、要因の探求はギブアップする。それとも、諦めずに探求して要因を掴み、凡人を天才・秀才にしてしまう能力開発プログラムを作るべきだろうか? いや、少なくとも私は、やめておこう。よく考えてみれば、そうしたプログラムを研究・開発・販売している会社はすでに存在している。いまさら私が手を出す必要はあるまい。それよりも私は、自分自身のためにも、凡人かつ怠け者でもそれなりに能力開発が可能な方法を探求すべきだ。
 

●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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2006年11月10日更新


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