「社会人に必要な数のセンス」経営数学講座-06フリーWebカレッジ


 NPO法人 フリーWebカレッジ 能力開発学科 コース001111  担当講師:加藤良平 情報ハブ株式会社 代表取締役 )    


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■「利子という概念を体得するための数のセンス」経営数学講座-06

【問題】

 ある会社において、資金はその額にかかわらず、年間に6パーセントの利益を生み出すものとする。たとえば2011年1月1日に1000万円の資金があれば、それは2012年1月1日に1060万円になる、ということである。

 この会社が、2011年1月1日に、別のある会社に、以下のような条件である商品を譲渡した。

・2011年1月1日に100万円支払ってもらう。

・それとは別に2012年1月1日にも100万円支払ってもらう。

・それらとは別に2013年1月1日にも100万円支払ってもらう。
 これで支払いは完了する。

 この時、消費税は無視するとして、2011年1月1日における商品譲渡価格はいくらと考えるのが適当か。

 (1)282.36万円 
 (2)283.02万円 
 (3)283.34万円

 

(3)を選んだ人:確信を持った計算で283.34万円とわかるなら、利子(逆にいえば現在価値への換算)の基本は理解できている。ただし参考までに、発展解説を読んでほしい。

 それ以外を選んだ人:利子(現在価値への換算)の基本を理解するため、基本解説を読んでほしい。

 

【基本解説】

 表面上、支払ってもらう額の合計は300万円である。しかしそのうちの100万円は1年後の支払いであり、別の100万円は2年後の支払いである。「明日の百円より今日の五十円」ということわざがある。それは極端であるにせよ、1年後に支払われるはずの100万円には、現時点で100万円の価値はない、と考えるのが自然だろう。実際この会社の場合、今すぐ100万円あれば、それは一年後には106万円になっているはずなのである。

 つまりこの問題の場合、その場で300万円もらう(その場合は商品譲渡価格300万円)のに比べて、少ない見返りで、つまり安く、商品を譲渡したことになる。

 今の100万円は来年には6万円増えるのだから、逆に来年の100万円は今でいえば6万円差し引いた金額であり、さ来年の100万円は今でいえば12万円差し引いた金額。そう考えると、2012年1月1日支払い分で6万円引き、2013年1月1日支払い分で12万円引く。つまり合計18万円を差し引いた「282万円」が答になってしまう。しかしこれは単利と複利を混同した、あまりに初歩的な誤りである。

 5割引(半値)のそのまた5割引が10割引( )にはならないのと同じで、もし1年後に6パーセント引き(94パーセント)になるなら、2年後には0.94×0.94=0.8836すなわち11.64パーセント引きとなるはずだ。それで計算すると、100万+100万×0.94+100万×0.94×0.94であり、これを計算すると282.36万円となる。これは答(1)だ。ここには単利と複利の混同はない。

 しかしそれでもこの答は誤っている。「今の100万円は来年には106万円なのだから、逆に来年の100万円は今でいえば94万円」という考え方が、そもそも誤りなのである。実際、今の94万円は、1年たっても、94万×1.06=99.64万円にしかならない。つまり来年の100万円は今でいえば、100を1.06で割った約94.34万円と考えるべきなのである。

 この問題の場合、100万円をすぐに、別の100万円を1年後に、そして別の100万円を2年後に、それぞれ払ってもらうわけである。ということは平均1年後ということだからそれで統一し、先ほどの約94.34万円に3を掛けて283.02万円。これが答(2)だ。

 しかしこれも誤り。0年後(すぐ)と1年後と2年後という3つの数字の平均は確かに1だが、複利の利子を考える時に、年数の方を先に平均してはいけない。

 というわけで、もっと地道に計算しなければならない。すぐに支払われる100万円はそのまま100万円。1年後に支払われる100万円は、100万÷1.06で94.34万円。そして1年後に支払われる100万円は、100万÷1.06÷1.06で89.00万円。それらを足した283.34万円すなわち(3)が正しい答ということになる。

 このように、未来に発生するであろう収入や支出を、現在の金額に割り引くことというのは、企業や不動産の価値を評価する上で、非常に重要なことである。「金融機関の利子とは違うじゃないか」と思うかもしれないが、今回の問題でいえば、1年で6パーセントという値が、まさに利子の役割を果たすのである。

 

【発展解説】

 もっと地道に計算しなければならない。基礎解説の中でそう述べた。もし2011年1月1日から2020年1月1日まで、10回に分けて100万円ずつ支払われるのならどうだろう。これも考え方の基本は同じである。すぐに支払われる分は100万円。1年後支払いの分は100万円÷1.06。2年後支払いの分は100万円÷1.06÷1.06。3年後支払いの分は100万円÷1.06÷1.06÷1.06。そして3年後支払いの分は、100万円を1.06で9回割った金額だ。

 これらをすべて地道に計算することくらいなら、根性で頑張ればできるかもしれない。しかし100回の均等分割だったら?1000回の均等分割だったら?

 

 実は数学的な正しさを保った上で、こういった「地道な計算」は回避できる。高校の数学で「数列」や「級数」を学んだ場合、まさにその公式が使えるのだが、覚えている人は少ないだろう。

 たとえば10回の均等分割であれば、計算したいものは以下の数字である。

100万(すぐ支払い分) + 100万÷1.06(1年後支払い分) + 100万÷1.06÷1.06 (2年後支払い分)+ 100万÷1.06÷1.06÷1.06(3年後支払い分) + ・・・(4・・・8年後支払い分) + 100万÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06(9年後支払い分)。

 さて1.06で割るということは、1.06の逆数すなわち0.9433962を掛けることに相当するが、その値を簡単のためにrと書こう。また「100万」という数字は共通なのでくくりだすことにすると、結局次の数を求めればよいことになる。

 100万×(1+r+r**2+r**3+・・・+r**9)

 ただしr**2とはrの2乗、r**3とはrの3乗、・・・、r**9とはrの9乗のことである。この数式の中のカッコ内が級数と呼ばれるもので、これはその部分の教科書に出てきたはずだが、以下のように変形できる。

 1+r+r**2+r**3+・・・+r**9=(1-r**10)÷(1-r)

 r=1÷1.06として右辺を計算すると、7.80177である。つまり10回の均等分割の現在割引価格は、これに100万を掛けた、780.17万円ということになる。名目的な受け取り金額は1000万円だから、やはり現在価値としてはかなり小さくなっていることがわかる。

 ちなみに100回の均等分割の現在割引価格は、1761.46万円であり、名目的な受け取り金額1億円を大きく下回っている。

 

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2007年1月8日更新
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