セクション6

■セクション6
「単一対策と複合対策」

ヒューマンエラー・準ヒューマンエラーともに、対策は、単一の場合と、複合の場合がある。

ここでいう単一の対策とは、対象となる或る一つのヒューマンエラー・準ヒューマンエラーの発生を、たった一つの対策によって、予防・再発防止しようとする対策のことである。

ここでいう複合の対策とは、対象となる或る一つのヒューマンエラー・準ヒューマンエラーの発生を、複数の対策で、予防・再発防止しようとする対策のことである。


6-1「単一対策のポイント」

単一対策のポイントは、何よりも、「それが本当に単一で良いのか?」つまり「他にも対策を打つべきでは?」という懐疑を最後まで持ち続け、「単一でよし」との結論に安住しないことにある。

では、この懐疑を持ち続けるにあたってのポイントは?それは、二つある。

まず、「原因が一つであるとの判断が、本当に正しかったのか?」つまり「複数の原因が、そのヒューマンエラー・準ヒューマンエラーの原因となっているにもかかわらず、見落としているのではなかろうか?」とのさらなる懐疑を持つことである。

ともかく、セクション2コース000500でも述べたように、一つの問題が、複数の原因により発生している場合がある。その場合にもかかわらず、一つの原因と判断し対策を打っても、効果が低めとなる。

もう一つのポイントは、「たとえ原因が一つであっても、その原因に対して、複数の対策を打つことができないか?」との観点から、すでに決めた対策の他にも打つべき対策を検討してみることにある。

これにより、

A.一つの対策が機能しなかった場合の、二重、三重の防止策となる

B.一つだけの対策よりも複数の対策を打ったほうが「原因による悪影響」がより一層減少する

のいずれかの成果を得ることができる。

ちなみに、なぜ「いずれか」なのかと言えば、Aは「問題解決の共通ステップ(セクション2参照)」のステップ4とステップ6のほうで、Bはステップ7のほうで、それぞれ別々に得る成果だからである。


6-2「複合対策のポイント」

複合対策のポイントは、対策が複数あるだけに、優先順位を明確することにある。

では、優先順位を判断するにあたり、どのような目安にて判断すべきか?

コンサルテーションの際には私は次の6種の目安をクライアントに提示している。

a.効果の確実性の高さ、もしくは、効果の大きさ(高いほど・大きいほど優先順位が上)

b.対策着手までの早さ(早いほど優先順位が上)

c.効果が出るまでの早さ(早いほど優先順位が上)

d.効果が持続する期間の長さ(長いほど優先順位が上)

e.対策を維持できる期間の長さ(長いほど優先順位が上)

f.他の問題解消への波及効果の大きさ(波及効果が大きいほど優先順位が上)

この6種の目安は、無条件ならばこの記号順に、重要視していけばよいと思っている。しかし、実際には、それがどのような問題かによって異なる。したがって、上記の記号にこだわらずに判断するか、マトリクス表を作って、いったん上記6項目それぞれの観点から個別に優先順位をつけ、それを合算するような形で総合的な優先順位を決めて頂きたい。

なお、上述の目安はすべて予想ベースの判断で構わない。たとえば、aであれば、「効果が大きいであろう」、bであれば「着手がすぐできるであろう」といったような予想による判断で構わない。「実際に進めてみたら予想と異なった」ということは充分起こり得る。それを恐れて二の足を踏んでいるよりも、予想と異なった時点で修正を加えていくことを前提にどんどん推進していくことをお勧めする。


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