セクション5

■セクション5「次世代キャリアデザイン研修に必要な内容」

キャリアデザイン研修に求められるのは、「労働者が能力を知る仕組み」(旧労働省:「今後の職業能力開発の在り方研究会」の報告 より)である。
具体的には、同報告書によると「労働者自身が経験してきた職務や教育訓練・自己啓発等によりどのような能力を身につけてきたかを、キャリアの節目ごとに、いわば棚卸しをすること」となっている。
この棚卸しのことを一般的には「外的キャリアの把握」といい、通常のキャリアデザイン研修では必ず行われる。
外的キャリアの把握以外に通常行われるのは、「内的キャリアの把握」(自分の価値観や思考・行動特性など)、「環境状況分析」、「目標設定」などがある。
これらの詳細は割愛し、次世代キャリアデザイン研修に最低限必要な二大項目を取り上げる。

■キャリアデザイン研修の内容 二大項目
その1「キャリアカウンセリング」

「心からの気づきを得る」ことの重要性は前述したとおりだ。
その気づきを得るために従来から行われているのは、
・アセスメントツールの利用
・自己の棚卸し。(職歴、経験、能力など・・・)
・グループディスカッションで他者から得る気づき
である。
これらを通じて、自分のミッション、価値観、自分は本当のところ何をやりたいのか、などを明らかにする。
これらももちろん重要なのだが、一つ、一番大事な要素が欠けている。
それは、「自ら語ることによる気づき」である。
自分の真の思い、心の奥底にあるもの、それらは口に出すことによって始めて明確になり、気づく。話すにつれ、なぜそう話したのか、なぜそう感じるのかなど、自分の奥底にあるものに自然と気づいていく。
この現象を、コーチングやカウンセリングでは「オートクライン」と呼ぶ。
次世代キャリアデザイン研修に必要な内容の一つが、「参加者が自ら語ることによって真の思いに気づく機会を作る」、すなわち、「キャリアカウンセリング」の設定である。
しかし、社内の人には、なかなか本音を話せないものである。
そこで、キャリアカウンセリングは、外部の専門家であるキャリア・カウンセラーと行うことが大変重要なポイントとなる。

■キャリアデザイン研修の内容 二大項目
その2「フォロー体制」
研修をやりっぱなしにせず、研修であがったモチベーションを維持し続けるためには、フォロー体制が重要になる。
1)体制
たとえば、次のような体制を整備する必要がある。
・ 上司によるフォロー制度(キャリア面談)
・ フォロー研修
・ キャリアカウンセリングを行ったカウンセラーとのフォロー面談

また、恒常的施策として、次のような制度があることも求められる。
・ セカンドライフ支援制度(独立支援、再就職支援)、
・ 再雇用制度
・ キャリアパス設定やキャリア・デベロップメント・プログラムの用意
・ キャリアベースの能力開発体系

2) 自己啓発支援制度
自己啓発は、前述の「今後の職業能力開発の在り方研究会の報告」でも、「事業主による施策の重要な手段として位置づけ、支援を行うこと」となっている。そのために「目的や内容・方法についての的確な情報が必要であり、<中略>必要な情報の提供が不可欠である」とし、自己啓発への支援強化の重要性を指摘している。

キャリアデザイン研修終了直後は、モチベーションが非常に高い状態にある。 その高さを学習につなげ、より能力アップに結びつけていくのが効果的な方法と言える。

具体的には、
・ 研修最終日に自己啓発コンテンツを紹介し、申し込みを募る
・ 自己啓発コンテンツも、さまざまな手段を用意する。たとえば、
(ア) 2時間程度の終業後セミナー (自社開催)
(イ) eラーニングや通信教育
(ウ) 外部機関が行うセミナー
(エ) 外部研修施設でのセルフスタディ(パソコン習熟、など)
などが考えられる。

「キャリアカウンセリング」と「フォロー体制」。
これが次世代キャリアデザイン研修に必須の二大項目であり、気づき・エンプロイアビリティ向上・リテンションの3つの目的を果たすために欠かせない項目となる。

以上、“次世代キャリアデザイン研修”について述べた。
次のコースでは、現在の企業の重要課題である「メンタルヘルス・マネジメント」について述べる。
実は、“次世代キャリアデザイン研修”が、企業における「メンタルヘルス・マネジメント」にも有効な打ち手となるのだ。
なぜ、キャリア系の研修がメンタルヘルス対策につながっていくのか。
次のコースでご案内する。

講師:飯島康仁( 株式会社JMAMチェンジコンサルティング アクティブ・キャリアプラン推進室)


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