■セクション2「キャリアデザイン研修変化の背景-1「社会基盤・雇用環境の変化」
IT革命を中心にした技術革新や経済のグローバル化などによって、社会的・経済的基盤を始め、労働環境までも一変したのは今さら言うまでもない。IT技術が人の仕事の肩代わりをすることで、さまざまな業種で「働く場所がなくなってしまった」状況まで生まれている。
また、合併による事業所・支店・工場の閉鎖などに伴う人員整理もしばしば行われている。
終身雇用が前提の時代は、たとえ「ITが人の肩代わり」をした場合でも、職種転換を含めて、その企業で雇用を保障するのが通例であった。 しかし、現在では100%の雇用保障をする企業はどれくらいあるだろうか。
平成不況、いわゆる「失われた十年」が企業や雇用に与えた影響も大きいものがあった。
不況期にリストラが広く行われ、日本的経営の3種の神器と言われた「終身雇用」「年功序列制賃金」は徐々に崩壊を始め、それらを前提として構築されていた企業内の様々な制度は、変化を余儀なくされた。
雇用政策は言うに及ばず、年功序列賃金体系や退職金制度などの見直しが行われ、新たに成果主義や、早期退職優遇制度・中途転職支援制度、非正社員の採用、役職定年制度などを、各企業が次々と導入していった。
能力開発制度では、企業内労働市場のみで通用するスキル習得を目的としたものから、外部労働市場でも通用する能力獲得のための研修も組み込まれ始めた。 また、選抜研修による幹部社員の早期選出が行われる一方で、これまで企業を支えてきた従来型のOJTは表舞台から姿を隠し始めた。
法律面では、2006年4月に高年齢者雇用均等法が改正・施行され、定年が延びた。 最長5年定年が延びたことになるが、その一方では早期転進支援制度などの会社の施策も導入されており、従業員にすれば、「いつ退職をするか」を考える期間が格段に幅広くなったと言える。
これらの社会基盤や雇用環境の変化を受けて、キャリアデザイン研修の目的も、「終身雇用を前提に、雇用されている会社での自らの仕事キャリアやライフプランを考える」といった目的から、「終身雇用は選択肢の一つに過ぎず保証もできない、自らのエンプロイアビリティを向上させ、仕事だけではなく人生全体を捉えたキャリアを考える機会とする」といった目的へと変わらざるを得なくなった。
いわゆる「自律・自立」への変化である。
講師:飯島康仁( 株式会社JMAMチェンジコンサルティング アクティブ・キャリアプラン推進室)