■セクション1「安全管理/危機管理 概念論コース開講の趣旨」
私たちは高度な安全確保技術を前提に、安全確保技術が低い時代に比べ危険性の尺度を変えている。そのため、設計者の予想を越えた原因による事故が起きた場合、安全性が低い時代には発生しえないタイプの災害を招く。
それだけに、私たちは安全確保技術の進歩を評価しつつも油断してはならず、安全管理そして危機管理にますます力を注がなければならない。
今さら私が言うまでもなく、こうした意識は広範に浸透しているようで、「安全管理」「危機管理」や「リスクマネジメント」という言葉を耳にする機会は多い。
そこで、当コースは、「安全管理」「危機管理」とは何か、改めてその概念について考察し明確化することで、この二つの行為に取り組む人たちが職場で議論する際の叩き台となれば幸いと考え、開講した。
後述もするが、「安全管理」「危機管理」自体は総合的な概念であり、実務上は「管理の対象」と「管理の担当者」を特定しない限り、具体的な方法を考察することはできない。
しかし、何も「安全管理」「危機管理」に限らず、人によって概念が異なっていたり※1、異なっていることに気づかずにいたりする中、具体的な方法を論じても話が噛み合わず会議・打ち合わせの効率は落ちるし、組織が混乱する原因ともなる。
当コースは「安全管理」「危機管理」の概念論に徹し、たとえをあげる場合を除き、業界も特定せずに論じる。
「安全管理」「危機管理」は官民・業種問わず、最優先の具体的な案件であるはずだ。それゆえ、当コースの抽象的な内容に、もどかしく感じたとしても自然である。
だが、「急がば回れ」の諺を信じ、以下受講頂きたい。抽象的ならでは※2の受講成果を得ることができる上、結果、職場における「安全管理」「危機管理」の議論に必ず役立つと確信する。
※1:
学者間の論争ならば、概念の違いは。双方の不足点を浮上させ説を発展させる上で有益である。だが、同じ業務に取り組む職場においては、準備段階はさておき、実行段階では概念が用語規定により統一されているべきである。
※2:
「抽象的ならでは」のメリットは、国、法人形態、業種、職務等に縛られず、幅広く適用できることである。したがって、当コースの受講者は、安全管理・危機管理に興味ある人ならば、全員が対象者となる。