セクション6

■セクション6「まとめ ~ 安全管理/危機管理の概念上のポイント」

以上によって、安全管理/危機管理の概念が明確になったことと思うが、いかがだろうか?
ポイントを確認すると、次の通りとなる。

1.安全管理と危機管理の概念は、「安全管理上の危機管理/危機管理上の安全管理」(b)において、重なり合う。
2.安全管理には、そもそも危険に近づかないという、いわば「純・安全管理」(a)の選択肢がある。
3.危機管理には、「純・安全管理」(a)の選択肢は無い。
4.危機管理の担当者には、安全確保が不可能になってしまった際、危機による悪影響を少なくするという、いわば「純・危機管理」(b)の義務がある。
5.安全管理と危機管理を実際に行うには、まず管理対象を特定し、その上で担当者を決める必要がある。
6.安全管理と危機管理を別々の担当者とするか、兼務させるかは、管理対象の特性次第である。

なお、ある程度以上大きな組織においては、安全管理/危機管理の対象は多くあるはずで、多種多様な職務・多種多様な作業に、不均一に分散しているはずである。※1 だからと言って、すべてに渡って一々、「安全管理者を任命する」「危機管理担当者を任命する」といったようにして辞令を出す必要はない。また、安全管理/危機管理に関わる作業名称全てに、「○○○安全管理作業」「○○○危機管理作業」という言葉を付ける必要もない。それぞれの仕事の手順の中に、安全管理上/危機管理上の行動・動作が含まれてさえいればいいのである。

しかし、そうであっても、管理対象一つ一つの安全管理/危機管理の責任者は、明確になっている必要がある。
この「いちいち安全管理/危機管理と呼ばなくても、管理対象一つ一つの安全管理/危機管理の責任者は、明確になっている必要がある」という、一見、矛盾するかのようにも思える点は、安全管理/危機管理のポイントであり、組織運営上の大きな課題でもある。

この課題への具体的な取り組みは、職務分掌マニュアルの作業項目一覧表、および、「規定作業/委任作業/随時指示作業の判定」によって実現可能となる。それどころか、安全管理責任・危機管理責任を正確に明文化する手立ては、「規定作業/委任作業/随時指示作業の判定」しかありえない。この判定については、当カレッジの別コース、                             にて詳しく説明しているので、そちらをぜひ受講して下さい。

では、別のコースで、またお会いしましょう!

<安全管理/危機管理・概論-1 概念論 おわり>


※1:
たとえば大型航空機による旅客運輸の安全管理/危機管理をする立場を想像してみると、まず機長や副操縦士、管制官の立場が思い浮かぶが、これらだけで3つの職務となり、緊密に連携を取る関係にはあるものの、それぞれの作業特性は異なる。さらに旅客機の職務といえば、客室乗務員が思い浮ぶが、この職務も、前述3職務とはまた別の安全管理/危機管理を行ない、たとえば国際便ファーストクラス担当ともなれば完全な生食とまでいかなくともそれに近い鮮度管理をしなければならない種の食品の衛生面での安全管理までをも行う。また同じ航空会社でも地上勤務にて空港のチェックインに責任を持つ職務は、ハイジャックやテロ防止のために持ち込み手荷物に関する安全管理を行う。飛行機が空港の格納庫でそれこそ羽根を休めている間は、整備職務がメンテナンス上を通じて機器の安全管理を担当する。IT関連の職務は情報セキュリティ上の安全管理/危機管理を行う。このように安全管理/危機管理は、多種多様な職務・多種多様な作業に分散しており、しかも不均一である。


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